JABEE森林および森林関連分野産学連携プラットフォーム概要

 

開催日時平成18121114:0017:00

場所:主婦会館プラザエフ(東京四谷)

参加者 22

産側出席者 9

氏名

勤務先

役職

市村 良平

群馬県 環境・森林局

参事・林政課長

神田 憲二

王子製紙株式会社

常務執行役員,原材料本部長

田中

()森林総合研究所

元理事長

根橋 達三

()日本森林技術協会

理事長

春田 章博

株式会社 環境・グリーンエンジニア

技術第一部長

藤原 秀樹

日本製紙株式会社

取締役,研究開発本部長

三宅 晨一

住友林業フォレストサービス株式会社

相談役

三宅 八郎

株式会社 フォレステック

代表取締役

柳内 克行

国土防災技術株式会社

取締役・業務本部長

学側出席者 10

氏名

所属

太田猛彦

東京農業大学地域環境科学部森林総合科学科,JABEE理事

紙谷 智彦

新潟大学農学部,JAFEE森林技術者教育検討WG

窪田順平

総合地球環境学研究所,JABEE認定審査委員

小林達明

千葉大学園芸学部,JABEE総務委員

杉森 正俊

愛媛大学農学部

鈴木 誠

東京農業大学地域環境科学部造園科学科,日本造園学会理事

内藤健司

宇都宮大学農学部,JAFEE運営委員長,JABEE基準委員,日本森林学会理事

仁多見俊夫

東京大学大学院農学生命科学研究科,JABEE大学院特別検討WG委員

服部 重昭

名古屋大学大学院生命農学研究科,JABEE運営委員

弘中義夫

日本森林技術協会顧問,JAFEE事務局

オブザーバ 3

氏名

所属

福田征孜

JABEE専務理事補佐

大熊玲子

経済産業省産業技術環境局大学連携推進課課長補佐

川戸 英騎

林野庁林政課管理官

 

 

プラットフォームの概要

 服部重昭JABEE運営委員の総合司会のもとに、内藤JAFEE運営委員会委員長からプラットフォーム開催の趣旨説明(大学院技術者教育認定基準と学部認定分野別要件の見直し並びに産学間の自由な意見交流)、引き続いて太田JAFEE会長からJABEEおよびJAFEEの活動について簡単な紹介があった。参加者が多数になったため参加者の紹介が弘中JABEE事務局長より簡単に行われた。

 引き続きJABEE事務局福田氏のあいさつ、教育会側からの3件の話題提供があり、意見交流が行われた。

 

あいさつ

福田征孜(JABEE事務局)

 産業諮問協議会はJABEE会長直轄のアドバイザリーボードであり、1999年に、経団連の提言を受けて設置された。会員には製紙業界から歴代参加されており、森林分野とも関連が深い。JABEEに対して産業側の立場から様々な意見をいただいている。

 協議会でトップが話すだけではよくないので、山野井副会長の提案で産学プラットフォームを行うことになった。昨年開始され、3回開催されている。ここでは産学が対等な立場で議論することを原則にしている。産学それぞれに技術者教育およびJABEEについてやるべきことがあり変革が必要である。議論だけではなく、実行が求められている。

 しかし、それでも、分野によって事情は様々であり、分野別にプラットフォームを設置するのが適当ということになった。学に対しては大学院技術者認定についての取り組みを、産に対してはJABEE修了生の活用とJABEEへの参画をお願いしたい。まじめに学んだ学生は評価されるというインセンティブがほしい。

 

森林技術者教育の現状と課題」

紙谷智彦(JAFEE森林技術者教育検討WG新潟大学

 森林分野で行った技術者教育の現状と課題のアンケート結果について報告する。

 社会背景として学齢期人口が減少しており、各大学の受験生が減少している。就職については、関連産業の低迷、公共事業の減少などから難しくなってきている。

 国立大学は法人化によって予算が削減されてきており、教員定員も削減されており、専門教育の統合・再編が進んでいる。一方で大学院の充実と単位の実質化が求められている。

 学会は林学会が森林学会へ、造園では学会誌が造園雑誌からランドスケープ研究へと名称が変更されるなど、歴史的に受け継がれてきた領域とは異なる役割も求められてきている。

 大学教育の現状としては、いずれも教育改革が求められている。森林系の基礎知識と教養、プレゼンテーション能力、研究の課題を設定し、まとめて発表する能力、地球環境、地域、実習・実験などの実践的な教育が、全体として求められている。新たな特徴としてはインターンシップの導入、他コースとの連携が広がりつつある。

 アンケート個別の内容としては、まず学齢期人口の問題があり、普通入試は全体に減、推薦入試は横ばい、編入学は増加傾向である。その対策として、オープンキャンパスの開催、高大連携、ホームページの充実、パンフレット類の整備、講演会の開催などが取り組まれている。

 次に出口では、就職と進学が半々となっている。就職先の4割が公務員・民間の森林系だが、その他は他領域の民間企業となっている。修士も同様の就職傾向だ。大学の対応としては、受験対策をゼミに組み込むなど対策がとられており、就職委員会などができて、就職相談にも組織的に対応するようになってきている。国家公務員は一種が難しくなっており、二種が増加しているが、すでに頭打ち傾向で、今後は年5%以上で純減が予想される。地方公務員も減少傾向である。これから団塊世代の退職が始まるが、不補充のところが多いだろう。一方、民間の就職需要は幅広い業種で改善されてきている。民間は質が低下しない採用を追求しており、大学側には教育の質の保証が求められている。

 教育内容のキーワードとしては、顕著に増加しているものとして、生物多様性、GIS、森林認証、環境アセスメントなどがあり、防災や地球環境が社会に重視される領域として上位にある。一方、林業は低迷している。

 資格としては測量士補ほか多くのものがとれるようになっている。

 教育改善として、カリキュラムの改革が取り組まれているが、従来の学科とはミスマッチがあり、定員削減の中、必要な教員を採用できない悩みがある。解決策としては他コースとの乗り入れをうまく行うことがある。学生による授業評価、ひいては授業改善が進んでいる。ファカルティデベロップメントが取り組まれている。

 学会へ望むこととしては、教育改革に関する情報を流してほしい、議論の場を提供してほしい、技術者の地位向上をはかってほしい等の要望がある。

 入り口の課題としては、いかに魅力をアピールするかということがある。教育としては多様な森林機能を総合的に学ぶことが大切である。就職では、専門領域の確立とその拡大が求められる。

 

森林および森林関連分野のJABEE分野別要件と認定審査の現状」

窪田順平(JABEE認定審査委員,総合地球環境学研究所)

 JABEEでは昨年度までに16分野281プログラムを認定しており、その卒業生はすでに3万人を超えている。農学系では、農業工学15、農学一般7、森林3のプログラムが認定されている。年間に160プログラムの審査があり、審査員416名とオブザーバ264名が審査にあたっている。うち206名が産側であり、森林分野でも産側の審査員の積極的な参加を求めたい。

 森林及び森林関連分野の分野別要件は別紙の通りだが、これを決めた当時はまだ、教育に大学の目が十分に向いていなかった頃であり、できるだけ多くの大学が受けられるような緩やかな要件になっている。旧林学科の解体が進む中、制約を少なくするように書いてある。他分野では領域の専門性の保証のために、細かく規定しているところもある。

 現在までの森林分野の認定校は3校であり、量的拡大が先決で、10校を超えることを目指している。分野別要件の見直しは、ある程度の認定校が出た段階で行いたい。

 

JABEE大学院教育認定の検討状況」

仁多見俊夫(JABEE大学院特別検討WG委員,東京大学)

 分野別要件は、大学院の認定では必ずしも必要としていない。学部認定と大学院認定は別である。大学院認定の基準1では「国内外で・・・」という文言があり、国際性を重視している。一方、学習保証時間は、学部に比べてよりフレキシブルになっている。

 

産業側意見・質問事前調査の取りまとめ

弘中義夫(JAFEE事務局)

 事前に行った産業側意見・質問調査の取りまとめについて報告する。(内容は別紙資料参照)

 

意見交流

司会:服部重昭(JABEE運営委員,名古屋大学)

司会:採用者の立場から、大卒新入社員に対する印象・問題点について意見をいただきたい。また企業内の教育として特に取り組んでいることがあればご紹介頂きたい。

F氏(産): 大学の役割は企業に役立つ人材の育成と限定して考えたくないが、フィンランドから受け入れている大学院生と比較すると、英文でのレポート作成能力、コミュニケーション能力、プレゼン能力、国際的な現場の事情をよく理解しているという点で、日本の大卒社員は比較にならないほど劣っている。日本人で英文のレポートを書ける新卒者はまずいない。当社では見込みのある社員はまず英米へ留学させている。そうでないと一人で情報収集できなくなる。TOEFL700点取れる学生がいれば文句なく採用する。

N氏(学):東京大学では大学院入試にTOEFLを採用している。

O氏(学):英語の単位の取得条件にTOEFLを採用している大学があるが、学生が基準点を取れずに留年するケースが続出しており、現実的には、TOEFLを修了の要件にあげるのは難しい。

O氏(官):JABEEの基準を見ると、それが質の改善を目指していることをご理解頂けると思う。

M氏(産):最近の会社の業務はコンサル、木材生産関連など幅広くなっており、社員の1/3が大卒である。JABEEでは基礎教育と専門教育のどちらに重点を置いているのか?

N氏(学):JABEEが要求している項目ahのうち、cが基礎教育であり、dは専門である。したがってトータルに評価している。

M氏(産):新卒生を見ると一般教養が欠落している。文章が書けないし、読めない。高校レベルの微積分ができない。用語に対応できない。専門知識を持っているので「山に入ったら俺たちのもの」という意識では、「山から出たらどうするの?」という印象。大学院卒はOKだが学部卒は疑問が多い。農林高校卒と変わらない。

K氏(学):JABEEでは入試を含め、大学教育全般について評価しているが、一般教育についてはまだ弱いかもしれない。求めている1800時間のうち、専門教育は900時間である。

K氏(学):基礎教育については実際のところ苦労している。入試科目の範囲が狭くなっており、多くの森林系・造園系の学生は微積分ができないのが普通だろう。ゆとり教育の学生が進学してきており、事態はより難しくなっていて、各大学は補習授業などの工夫を講じている。

S氏(学):最近は三角関数を理解できない学生も交じっている。

K氏(学):私たちの大学では専門教育の人間が基礎教育も面倒を見ている。基礎数学だけでは学生は理解しない。専門とのつながりを理解させている。

F氏(産):基礎知識がないとどうしようもない。工学部卒業の社員はツブシがきく、それはサイエンテイフィックな考え方ができるからである。

Y氏(産):現在では新卒者に林学出身者は少なくなった。各種専門の技術・能力を持った大卒を採用しチームで仕事をすることがほとんどであり、何でもできるスーパマンは不必要。従って森林関係からは「フィールドが好き、山が好き」という熱意ある学生を採用したい。

F氏(産):最近の大卒は家庭教育もされていない。会社で家庭教育まで行っているのが現状だ。

司会:専門教育には問題はないか?

F氏(産):専門は企業でも教育できる。

K氏(産):大学の言う専門と企業の期待する専門的能力は少し違う気がする。業種で専門教育への期待が異なる。林産関連とか工学関連では必要かもしれないが、この領域では技術よりも自然が好きという哲学をもった全人教育が必要ではないか。何の研究でも良いから一つの仕事をやり遂げた達成感、自主性、自信を持った人間を育成する教育が望ましい。

K氏(学):国際誌に論文を掲載された学生が、面接で延々とそのことについて主張して、それで採用された者もいる。

司会:JABEEは細かい基準について審査するが、本来は特徴や伝統を受け継いだトータルな学生を育てることを目標にしている。また最低限、国際性は担保することを要求している。継続教育についてどう思うか?

F氏(産):外国では高等教育機関で行われる教育プログラムへ企業から社員が参加できる。企業がスポンサーになって教育を実施している。大学はもっと企業との連携に取り組んでほしい。現在では企業の施設の方がはるかに高度だが、基礎的な研究を大学には期待したい。当社の施設を利用した研究について大学の先生を誘ったことがあるが、断られた苦い経験がある。

O氏(学):大学には演習林があり、実習は主にそこでおこなっている。森林系では企業インターンシップはあまり進んでいない。

K氏(学):造園系では、企業との共同研究もインターンシップもたくさん行われている。

I氏(官):群馬県庁では林業専門職採用が無くなった。林業関係はH13年度から土木に統合され、入庁しても必ずしも森林分野に回されず、農業土木関係の仕事をする場合もあり、自分の専門性を意識できないような状況。60歳定年後の希望者再採用ということもあり最近は林業関係の採用が少なくなっている。現場の場数を踏むことが重要で、演習林の実習だけではだめだと思う。もっと行政の機関も教育に利用してほしい。

K氏(官):最近は森林や自然環境といった側面が重視され、林野庁や国土交通省といった分野への関心が薄くなっている。入庁後の転職者が増加しており、職場の魅力を高める必要がある。入庁後2年目には現場の責任者となるので、地図を頼りに現場に行け調査報告書を作成できるような人間を教育してほしい。基礎的な部分は内部で研修を行っており、それが最も効果がある。

司会:最後に皆さんから、JABEEJAFEEに言っておきたいことはないか。

H氏(産):環境に対する感覚、現在の自然保護体系がどのようにして整備されてきたのか、知識や技術がどのようにして現在の状態まで発展してきたのか理解できている学生の教育が必要。道路や河川や都市計画と他流試合ができる卒業生がほしいが、それには専門領域についての歴史観が最も重要だと思う。自然観を持った卒業生。全体に通じた知識を備えた卒業生が望ましい

M氏(産):最近の授業科目では環境関連の科目が増えて林業関連科目が減少しているが、森林資源をもっと重視した教育を行ってほしい。戦後60年かけて造成してきた森林資源を伐採利用するという観点を忘れないでほしい。山村地域に住む人とかかわる、木材資源をサスティナブルに利用すること、森林造成について学んでほしい。

Y氏(産):机上で考える学生が多い。実践・現場を重視した教育を。

I氏(官):一人一人が林業について考える実態がない。相続せずに放置する例が多く、群馬県の山林の所有者の3割は県外だ。山村に住み込んでがんばろうという人がほしい。

T氏(学):現在、研究所では、ほとんどがプロジェクト研究になっている。グループでものごとを解決できる能力が大事になっている。自らの立場で、うまく役割を分担し、果たせる能力。競争的環境でプロジェクトを提案し、まとめる能力が必要。

N氏(産):公益法人として多くの技術者を社内に抱えている。JABEE認定の卒業生を採用したいが、大学からも特徴あるメッセージがほしい。

K氏(産):低コストの伐出、加工など、利用に特化した技術を持った人が本当はほしい。でなければ総合的な人間性となる。

司会:いい意見をいただいた。今回だけでなく、プラットフォームを継続していきたいと思う。

 

総括

N(JAFEE運営委員長,宇都宮大学)

森林関連分野は業種が多く、業種間で技術者に対する考え方が多様であり、森林分野の分野別要件として4つの分野に分けて作成されていることの必然性が再確認された。しかし要求される能力の水準という点では、たとえば英語によるコミュニケーション能力ではTOEFL700点以上というように、産業界にわかり易い品質保証レベルの表示が求められた。

今後さらに機会を捉えて、産学間での意見交流を深めたい。

 

記録:I(JAFEE運営委員,千葉大学)